銀座18クラシック5周年記念

フランス室内楽の夕べ

2019.7.11(木)

19:00開演(18:30開場)

 王子ホール 東京都中央区銀座4-7-5
全席指定 4000円


参考リンク:音楽ジャーナリストの池田卓夫さん、フランス室内楽の夕べを絶賛!⇒クリック!

 

王子ホール向かいの小さなサロン、コンチェルティーナGINZA。ここで毎月行われる銀座18(でちょっと)クラシックが5周年を迎え、
最多出演の實川風さん、長尾春花さん、鈴木舞さんを中心に、室内楽コンサートが行われました。
3人は東京藝術大学付属高校音楽学部(通称芸高)からの同級生。
その頃からピアノとヴァイオリンのDUOでの演奏は、数知れず行っていますが、今回ヴァイオリンの長尾春花さんと鈴木舞さんが合わせるのは初めてとの事。
国内外で活躍されている若手演奏家が一同に会し、一つの音楽を奏でるという、とても豪華なフランス室内楽の一夜となりました。

今回の選曲にあたり、實川さんが、フランクのピアノ五重奏を弾きたい!この曲ありきで、プログラムを考えました。
そのため、これを支えてくれる低弦のお二人は、田原綾子さん(ヴィオラ)と伊東裕さん(チェロ)と、いずれもまたヨーロッパを拠点に活躍中の強力なお二人。そしてピアノの齊藤一也さん、高橋ドレミさんを加えた超豪華メンバーが集結しました。
一曲目、女性作曲家の曲を演奏したい、との長尾さんの想いから、長尾さん、實川さんの演奏で、ヴィアルド6つの小品より1.2.6曲。
ポリーヌ・ガルシア=ヴィアルド (1821-1910)は、パリに生まれ、当時絶大な人気を誇ったオペラ歌手であり、ショパン、シューマン、ブラームス、ツルゲーネフなど高名な芸術家たちと親交を持ち、 マドンナ的存在であると同時に、素晴らしい作品を書いた女性作曲家でした。この小品集は、1867年に息子のポールのために作曲され、6つ(ロマンス、ロマの女、子守歌、マズルカ、昔の歌、タランテラ)の異なる情景が、甘く優しく彩られています。この中から3曲、さりげなく物語が始まるような「ロマンス」、もとはスペインの名だたる声楽家一族ガルシア家の出身である彼女ならではの「ロマの女」、そしてヴァイオリンとピアノが活発なリズムと共に息つく間もなく踊る、終曲「タランテラ」で、風とともに消えていくような、垢抜けた締めくくり(長尾さん記)。コンサートの初めにふさわしい洒落た演奏でした。

続くはルクーのヴァイオリンソナタ第三楽章。ルクーはフランクの弟子で、後半への序章でもあります。鈴木舞さん、これまた藝大同級生の齊藤一也さんのDUOで、情熱的で爽やかながらもどこか哀愁漂う主題が何度も姿をかえてソナタ全体に織り込まれています。全身で音楽を表現する鈴木舞さんの演奏に会場全体が感動に包まれました。

イザイ:2台のヴアイオリンのためのソナタより第一楽章。鈴木舞さん・長尾春花さん初共演です。イザイはヴァイオリニストとしてまた作曲家として後世に大きな影響を及ぼしたヴィルトゥオーゾです。ルクーやドビュッシーがこぞって彼に作品を献呈しました。たった2台の楽器が奏でているとは思えない重厚な響きに、密度の濃いハーモニー。お二人の演奏に息を呑む瞬間が続きました。

迫力の演奏の後、ちょっと一息。3人の同級生が今回の演奏内容について、マイクを手に語ってくれました。同級生同士のほのぼのとした会話で場が和み、
1部の最後は實川風さんと高橋ドレミさんのピアノ4手連弾で、ドビュッシー:6つの古代のエピグラフ。古代ギリシャや古代エジプトを題材に作曲されました。二人の息のあった音の流れがすばらしく、王子ホールの舞台の柱がパルテノン神殿に見えてくるような、不思議な音の響きを楽しみました。

後半は、今日の演奏会ハイライト、フランクのピアノ五重奏曲。全体は3楽章からなり、第一楽章は思いつめたような弦楽四重奏の印象的なメロディーに、ピアニストがソロで応える長大な序章で始まりました。
長尾春花さんはハンガリー国立歌劇場管弦楽団コンサートマスターとしての、さすがのリーダーシップ。そこに加わる鈴木舞さんの華麗な2ndヴァイオリン、田原綾子さんの深くて的確なヴィオラ、伊東裕さんの自然で視野の広いチェロ、本当に素晴らしいカルテット。實川さんのソロパートではのびのびと、ある時は一つ一つの音を確かめ、味わい尽くすような演奏で、見事な調和をみせていました。
瞑想的な第二楽章、そしてエネルギーを放出する第三楽章のコーダに至るまで、極めて密度の高いアンサンブルを聴かせてくれました。
本当にお忙しい出演者の皆さんが、この日のために集結し、切磋琢磨して一つの音楽会を作り上げてくれたことに、感謝と敬意を表します。
心よりありがとう。
すばらしい演奏に興奮が冷めやらぬ一夜。それぞれの感動を胸に、銀座の夜は更けていきました。

Program
ヴィアルド: 6つの小品より 抜粋 (長尾・實川)
ルクー :ヴァイオリンソナタ 抜粋 (鈴木・齋藤)
イザイ: 2台のヴァイオリンの為のソナタ 第一楽章(鈴木・長尾)
ドビュッシー : 6つの古代のエピグラフ (實川・高橋)
フランク: ピアノ五重奏曲ヘ短調(實川・長尾・鈴木・田原・伊東) 

出演

長尾 春花 (ながお はるか:violin )
鈴木  舞(すずき まい:violin)
實川 風 (じつかわ かおる:piano)
田原綾子 (たはら あやこ:viola)
伊東 裕 (いとう ゆう:cello)
齊藤 一也(さいとう かずや:piano)
高橋ドレミ(たかはし どれみ:piano)